Seel STAFF BLOG

カルチャー系フリーペーパーを制作しているSeel編集部のスタッフたちによるブログ。

インドの「tara books」が気になる。  

お久しぶりです。代表の中村です。最近一皮むけました。 夏も終わりにさしかかって、心なしか空気が乾燥し始めてきたような気がします。その影響かはわかりませんが、左手がなんだか恐ろしく荒れています。本格的に乾燥する季節になる前にはやく治さないと。 さて今回僕が紹介したいのはインドの出版社「tara books」です。

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きっかけは池袋のジュンク堂で発見したこの一冊の本でした。独特な雰囲気のフォークアートで装丁された大判の、見た目だけなら本当になんの変哲もない本でした。しかし家に帰ってみてもどうしても頭から離れず、何やらこの『夜の木』ただならぬ魅力がある気がするぞ、となり調べてみたところ、「tara books」にたどり着きました。 f:id:seel-magazine:20170923141628j:plain

tara booksは、インドの南部にぽつんと存在するとても小さな出版社です。ギータ・ウォルフという女性の方がたった一人で創立し、従業員数は現在も数えるほど。しかしこれだけの情報だけでは「ただの小規模な出版社じゃん」と思われることでしょう。最大の特徴は、すべての本が(厳密にはすべてではないですが)ハンドメイドで作られていることです。もちろん、冒頭で紹介した『夜の木』も。しかも、一度に数十部程度ではなく、約5000部も作るというから頭が下がります。シルクスクリーン印刷で作られているので、例えば10色使われているページでは、同じ工程を機械に頼らずやはり10回繰り返します。注文される部数のことを考えると気が遠くなります。実際、大口注文を受けた際には、「届けられるのは半年後になりそうですが大丈夫でしょうか」と聞くそうです。

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なぜそのような状況にあっても製作ラインを機械化したり従業員数を増やしたりしないのでしょうか。それは、ギータ・ウォルフ氏の「ちいさくあること」という理念に基づいて会社を経営しているからです。確かに、前述したような改良を行えば作業は圧倒的に楽になりますが、それにより失われてしまう従業員同士の「コミュニケーション」や、手作業によるインクのにじみや掠れなどの「偶然が生み出す温かみ」に重きを置いているのです。 そのようなバックグラウンドがあるからこそ、僕はジュンク堂の片隅にぽつんと平済みされていた彼らの本に惹きつけられたものだと思います。今は金欠なので手が出せないのですが、近いうちに絶対!買いたいと思っています(今売られている分がなくなると、入手がとても難しくなるとのこと)。紙からはほんのりインドの南風の香りがするそうです。嗅いでみたい。