Seel STAFF BLOG

カルチャー系フリーペーパーを制作しているSeel編集部のスタッフたちによるブログ。

怒る人を見ている

 

 

デザイナー2年の前田です。花粉が辛い季節になりましたね。年度が変わって4月1日からは3年生になってしまうのですが、月日の流れというものはなんとも早いです。あっという間にこのサークル活動でも引退が近づいてきました。私の今までの人生比であっという間に、というには大変なサークル生活でしたが、同期などの助けもあってなんとかやってこれました。多謝。残すはあと1号、長いのか短いのか私にはわかりませんがしっかり「大学生の価値観を広げるカルチャーフリーペーパー」の制作に勤しみます。

 

「なんとかやってきた」と書きましたが、みなさんはこのように人を動かす原動力は一体なんだと思いますか?「やりがい」?「自身のスキルのステップアップ」?それとも「受け手の笑顔」?残念ながら、少なくとも私はそれらを念頭に置いて活動をしたことはありません。むしろ自分に対する不甲斐なさだったり、ある程度の人数が共同で作業を行うことのもどかしさや強い焦りだったり、といったように意外と負の感情や強い怒りが主だったように思います。

 

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先日、その「怒り」を原動力に強く戦い続ける人々の映画を見ました。原一男『ニッポン国VS泉南石綿村(https://youtu.be/JN6_sA3aLWY)』という映画。

 

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原一男監督の作品を鑑賞したのは『ゆきゆきて、神軍(https://youtu.be/DLw5MnMg7bQ)』を大学の講義で観てから二作目となりますが、どちらにも非常に私にとってはインパクトのある作品でした。両作ともに強い怒りに突き動かされて生きる人々の姿を生々しく記録しています。その中で、『ゆきゆきて〜』は劇場型の精神性を持った奥崎謙三という活動家が主人公。彼は非常にアナーキーで過激な人物であり、目的達成のためなら暴力も厭いません。そのためこの作品は非常に衝撃的で、奥崎の暴走が物語を牽引していきます。対して、『ニッポン国〜』はというと日本の高度経済成長期に多く利用されたアスベストによって公害被害に遭った労働者や、その家族といった一般市民たちが主人公です。彼らは奥崎のように怒りに任せて暴力を振るうようなことはしませんし、真正直に日本の司法に則って勝利を勝ち取ろうとしてゆきます。純朴で弱い立場にある彼らの足取りは観客がもどかしくなるほどゆっくりで、静かです。劇中で監督が「もっと強い怒りをぶつけよう、というのはないんですか?」と漏らすほどに。

 

また、その長い道のりの中で、アスベストは彼らの体を蝕みます。しかし静かながらも強い怒りと悲しみは長い長い戦いの中で彼らの行動を前進させ続けます。そして、約8年の歳月をかけて完全とは言えずとも国に公害の責任を認めさせるのでした。

 

家族を失う人、自身が公害によって苦しむ人、行政の対応に憤る人。どの姿も活動のためとは言え、とても人に見せたくなるような姿だと私には思えません。それを撮らせるまでに彼らとの関係を構築し、作品として生の姿を編集した撮影チームの努力は並大抵のものではないでしょう。

 

上映時間が約3時間半とかなり長いため、鑑賞するのが億劫に思われるかもしれません。ですが、私にはこの長さにこそもどかしく長い8年間の歳月を感じさせられました。まだ上映しているところがあれば、ぜひ劇場でご覧になって欲しい作品です。ソフトで観るより、物理的な拘束力のある映画館で観てこそ目を背けてはならない、日本の経済成長の犠牲になった人びとの姿をしっかりと見つめることができるはずですから。

 

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4月1日に発刊するSeel Vol.31も、私たちの血と汗と涙の結晶です。ぜひ、お手にとってみてくださいネ。また私たちの活動に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、立教大学構内で行う新歓活動にご参加ください。一緒にカルチャー誌作りたいッピ!