Seel STAFF BLOG

カルチャー系フリーペーパーを制作しているSeel編集部のスタッフたちによるブログ。

生まれて死ぬ

こんにちは。営業3年の渡辺です。入学したころは4年間もあると思っていましたが、早いもので3年生。あっという間に過ぎていきますね。

 春休み中の約1週間、台湾とタイ旅行へ。まず、空港で海外旅行保険に入りました。クレジットカードを持っておらず、海外で何かあった時にどうしようもないからです。しかし海外旅行保険は、旅行の日数によって保険料が変わります。私たちの旅行は8日目の早朝に日本に着くため、正確には8日間。ただ、7日間と8日間では価格幅が大きかったので、7日間の保険にしました。その瞬間から、私は不安で不安で仕方なくなりました。最後の数時間、つまり日本に帰る飛行機が墜落して死んだら、死亡保障は発生しません。ふだん死んだらどうしようと考えることはないのですが、1週間考え続けました。

 日本を離れた段階で、私たちは飛行機とホテルしか決めていませんでした。地球の歩き方を見て、次の日の行き先を決める日々。九份に行ったり、アユタヤに行ったり、夜市に行ったり。そうしてタイの最終日、死体博物館に行くことにしました。正確には「シリラート法医学博物館」です。もともとはタイの医学生向けの施設だそうですが、なぜか日本の観光パンフレットに載っているため、日本人観光客も多いそうです。施設内は撮影不可なので、道中のタイっぽい風景です。

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死体博物館は有料の法医学博物館と無料の解剖学博物館に分かれており、順路的に法医学博物館から見ることになります。そして、印象的なのも前者です。ただ、両施設が離れているため、戻ってみようと思っても、気力がわかないと思います。満足するまで法医学博物館を見るべきです。

法医学博物館の見どころの一つは、凶悪犯罪者のミイラです。四人くらいいます。壁に寄りかかるようにして、口を開けた状態で立っているミイラ。気になる方は画像を検索していただきたいのですが、文字面で想像するものと異なりますね。私は、凶悪犯罪者といっても人は人だと感じました。ミイラなので生前とは人相が違うと思いますが、顔つきから極悪な感じはしません。私はこれまでミイラを見たことがなかったので、確実なことは言えませんが、法に触れないで人生を全うした人のミイラを見ても、違いを感じられないのではないかと思いました。

弾丸が貫通した頭蓋骨や、銃創、水死体の一部などもありました。水死は膨らんでいたので、水死ではない死に方をしたいと思いました。また、いくつか骨もあったのですが、パーツとしてみると不思議な感じがします。これらが組み合わさって私たちの体を作っているのかと、考えさせられます。加えて、ホルマリン漬けの人の臓器や骨などがあまりに大量に展示されているので、圧倒されてきます。そんな折、お母さんが薬物中毒だったため、発育が不十分だった子どもが展示されていました。とても小さくて、白くてつるつるとしています。人間ではないみたいで、想像上の宇宙人のようでした。

解剖学博物館は無料だと先ほど述べたのですが、法医学博物館の入場券がないと入れないので注意してください。まず、ある程度のスペースを割いて、シャム双生児が展示されています。体の一部がくっついてしまっているのですが、8パターンほどありました。ホルマリン漬けの標本が展示されているとともに、図解されています。法医学博物館にもシャム双生児は展示されているので、数多く見ることになります。また、水頭症の子どもなども展示されています。しかし解説が英語なうえ短いので、その場ではよく理解できませんでした。

また、2メートルを超える巨人の骨格標本もあります。手から足からすべてのパーツが大きいので、とても興味深いです。そして、タイの偉人の方の骨格標本も展示されています。私が訪れた際には、花がお供えしてありました。その他にも、動脈だけを取り除いた標本など、理科の図鑑を生で見ている気分でした。

博物館からの帰り道、いろいろなことをぐるぐると考えました。何かを成し遂げた人が、骨として展示されている(英語が読めないので何を成し遂げたかわからなかった)光景。その人は自分が展示されていることに気づいているのでしょうか。体の一部が大きいなど、何かしらの特徴があるため展示されている子ども。これまでの人生で、五体不満足を読んだ時くらいしか、自分が五体満足に生まれたことを考える機会がありませんでした。

ホルマリン漬けの標本が訴えてくる情報量の膨大さに、私は生まれてきて、死ぬんだなと思いました。飛行機が墜落する、という死因しか考えていなかったけど、私はいつ、どのように死ぬかわからない。そうだとしたら、私は私として生まれてきて、思い残すことがないように最期を迎えられればと思いました。

私は渡辺なので、私たちの代の最後のブログだと思います。終わりっぽいテーマを選んだつもりです。どうでしたか?