Seel STAFF BLOG

カルチャー系フリーペーパーを制作しているSeel編集部のスタッフたちによるブログ。

うしろから でも読める漫画

営業1年高浦です。よろしくお願いします。

 

初投稿です。大学に入りサークルに入部したらブログを書く事になりました。ブログに対してあまり馴染みのない世代ではありますが、かつて僕もブログを書いていた事があります。アメーバピグというサービス内での、いわゆるアメブロです。ピグと呼ばれるアバターを作り、現実の場所を模した空間でひたすらにチャットを楽しむ事が主な目的のアメーバピグですが、当時、友人である浜西に誘われ僕はこのゲームに頻繁にログインしては、ひたすらにチャットを楽しんでいました。浜西というのは僕の幼馴染で、スマブラのステージを毎回ニヤニヤしながら「神殿」にされて嫌だったのをよく覚えています。浜西はこのブログ内で、登場人物が全員四十近いサラリーマンが主役の戦隊モノを創作しており、同時に僕は彼の作品のファンでした。そんな彼に影響され、僕もニヤニヤとブログを書いていたというわけです。特に誰かに見せるわけでもないブログでしたが、やっている本人たちが一番楽しかった、いい思い出です

 

そんなブログですが、今回は当時のようにサラリーマン戦隊の続きを書くわけにもいかないので、僕の好きな漫画の話ができたらと思います。

 

 

突然ですが僕は、見終わったあとネットで解説を読みたくてたまらない!となる映画が好きです。

 

あれやこれやと考えては、製作者の掌の上で毎回ヘトヘトになるまで踊らされている、とても理想的な観客だと思っております。

 

そんな僕が、ここ10年ほど踊らされ続けている漫画があります。

 

石黒正数著 『それでも町は廻っている』です。

 

f:id:seel-magazine:20180818183622j:plain

 

舞台は東京都大田区の下町丸子商店街。主人公の嵐山歩鳥が女子高生探偵になる事を志しながら、近所のバアさんが経営するメイド喫茶でアルバイトをしつつ、商店街で起こる不思議な出来事に巻き込んだり巻き込まれたりしながら、得意な推理が冴えたり冴えなかったりする、基本一話完結のコメディ漫画です。

f:id:seel-magazine:20180818183646j:plain

主人公 嵐山歩鳥 目下探偵修行中

 

この漫画の何が僕を長いこと踊らせているかというと、それは構成にあります。作者曰く、『それ町』は歩鳥の高校三年間のどこかを描いている というのです。つまり、掲載されている順番と物語の中の時系列がバラバラになっているというわけです。

 

例えば6巻44話では、髪を切りすぎてそのちんちくりんさに拍車がかかってしまった歩鳥でしたが、45話では通常のちんちくりんな歩鳥に戻っています。

f:id:seel-magazine:20180818183711j:plain

中学の同窓会に向けて髪を切る歩鳥だったが、床屋のおっちゃんの手違いで切りすぎてしまう

 

他にも12巻98話では、まずタイトルが『エピローグ』とある通り、物語が終わった後の“その後“を描いています。もちろんこの話が最終回というわけではありませんが、当時はこの話を最後とし、連載が終了したと勘違いした人も多かったようです。

f:id:seel-magazine:20180818183738j:plain

実はこの話、歩鳥が提出する課題の一部だったのですが、それを含めても物語の後書きとして読むことができます

 

このように、いろんな時間軸で歩鳥たちの生活を見ることができるため、続けて読んでいると思わぬ伏線を見つけることができたり、あそこに出てきたあれってここと繋がるんじゃないか などと読み返したりと、まさしく何周も“廻り“つづけることができるのです。この構成なら、漫画をうしろから読んでいったってなんの問題もありません。

 

 

全16巻をもってこの物語の連載は終わりましたが、現在公式ガイドブックなるものが発売中です。ここでは作者である石黒正数氏が、各エピソードの年表を始め作品設定を解説しているのですが、おそらくかつての僕らのようにニヤニヤしながら書いていると思います。つくっている本人が一番楽しいに違いありません。

 

みなさんぜひこの機会に『それ町』を後ろから読んで、作者の掌の上で踊り疲れてみてはいかがでしょうか。